熊本女子ハンド「専門誌による1次リーグ振り返り」

11月30日に熊本で開幕した女子ハンドボール世界選手権。参加24チームが6チームずつ4組に分かれて争われた1次リーグが12月6日に終了し、12月8日より、メインラウンドが始まった。そこで、1997年以来となる日本での世界選手権を楽しんでもらおうと、ハンドボール界唯一の月刊専門情報誌『スポーツイベント・ハンドボール』に、1次リーグを振り返ってもらった。

(テキスト・写真:「スポーツイベント・ハンドボール」

日本らしい「おもてなし」の大声援

日本女子代表・おりひめJAPANはロシア、スウェーデン、アルゼンチン、中国、コンゴ民主共和国とともにDグループに入り、開幕戦でアルゼンチンに、第2戦でコンゴ民主共和国に勝利した。その後、前回大会4位のスウェーデン、リオデジャネイロ・オリンピック優勝のロシアに敗戦したが、最終戦で中国を破り、3勝2敗でメインラウンド進出を決めた。
 
2ヶ月前に司令塔の横嶋彩選手を、大会直前にキャプテンの原希美選手をケガで失いながら、そこから新たな組み合わせを探しつつ、大会に臨んでいるおりひめJAPAN。スウェーデン戦、ロシア戦と課題が残る試合だったが、これがメインラウンドで覚醒するきっかけになることを願いたい。

会場となったパークドーム熊本には、日本戦に限らず、一般観戦客とともに「1学区1国応援活動」による多くの小中学生も訪れ、各国がそれぞれに声援を受けながらプレー。それはパークドーム熊本以外の4会場も同様で、選手、監督は一様に「温かい雰囲気、たくさんの応援に感謝したい」という趣旨のコメントを述べている。日本らしい「おもてなし」のひとつの形と言っていいだろう。

1次リーグの注目ポイント

Aグループは優勝候補の一角・オランダが初戦でスロベニアに敗れる波乱があったものの、その後立て直したオランダと、同じく優勝を狙うノルウェーが抜け出し、スロベニアとの直接対決に勝利したセルビアが3位を確保した。オランダ、ノルウェーともに基本的な技術力が高く、きれいで強いハンドボールを見せてくれる。ノルウェーの司令塔オフテダル選手は、170cmに満たず、ヨーロッパ勢の中では小さい部類に入るが、その技巧は注目に値する。

今大会の「死のグループ」となったBグループは、その名にふさわしい激闘、死闘の連続に。前回大会女王のフランスが、初戦でアジアの雄・韓国に敗戦。その後も韓国は快進撃を続け、3勝2分の負けなしで、グループを首位通過。それに続いたのがドイツで、フランスにこそ敗れたものの、長身選手と強固なGKで激しく守り、派手さはないもののロングシュートやポストシュートで着実に得点を重ねた。最終戦でフランスに競り勝ち、3位の座を手にしたデンマークは、ドイツ同様の堅いディフェンスが持ち味。オフェンス力はそこまで高くないものの、5試合で3度Player of the Matchに選ばれたGKトフト選手が止めまくった。

日本が属するDグループとメインラウンドで対戦することになるCグループは、スペイン、モンテネグロ、ルーマニアが突破した。スペインは初戦でルーマニアをほぼダブルスコアの31−16で下す完勝で力を示すと、5連勝を飾った。攻守にバランスの取れたその戦いぶりは、さすがハンドボール大国と思わせられる完成度の高さ。86番のカブラル選手の身体能力の高さは一見の価値がある。2位のモンテネグロは、ルーマニア、ハンガリーの両国から1点差で勝利をもぎ取った。試合中のリアクションの大きさなど、技術の高さだけでなく、メンタル面の強靭さも特徴的だ。ルーマニアは現時点での完成度はまだ高くないが、世界最優秀選手に4度選ばれているスーパーエースのネアグ選手のシュートを見てほしい。

12月8日以降も、上位3チームずつが進むメインラウンドと、下位3チームずつが順位を決定するプレジデントカップが、パークドーム熊本とアクアドームくまもと、熊本県立体育館で、12月15日まで毎日のように行なわれている。身体と身体のぶつかりあい、スピード感あふれる攻防、セネガル初勝利後の勝利のダンスに見られた豊かな感情表現など、ハンドボールの魅力が凝縮したようなゲームが繰り広げられている。1度見に行った人も、興味はあるんだけど試合は見たことがない人も、そして、ハンドボールを知らなかったけど、この記事をたまたま目にしたという人にも、まだ間に合うので、ぜひ足を運んでもらいたい。

2019女子ハンドボール世界選手権大会


熊本県で2019年11月30日から12月15日の期間、開催される第24回世界女子ハンドボール選手権。2年に1回開催されるハンドボールの国際大会で、今大会の優勝チームには2020年に開催される東京オリンピックおよび次回大会の出場権が与えられる。日本を含む24ヶ国が出場。
【大会公式サイト】https://japanhandball2019.com/

スポーツイベント・ハンドボール


ハンドボール界唯一の月刊専門情報誌『スポーツイベント・ハンドボール』。女子ハンドボール世界選手権は、大会前からの密着取材を続け、ウェブサイトやツイッターで速報を配信している。専門誌ならではの解説や展開が見もの。
【オフィシャルサイト】 http://sportsevent.jp/

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