浅川隼人、「スポーツと食で地域を変える」

2022シーズン、日本フットボールリーグ(JFL)の奈良クラブに移籍した浅川隼人選手は、シーズン前に掲げた3つの目標をすべて叶えた。有言実行を地でいく浅川選手に、シーズンを振り返ってもらった。

有言実行の1年

サッカー選手として5年目を迎えた浅川隼人選手は、前年のJ3リーグからカテゴリーを落とし、JFLの奈良クラブでのプレーを選択。J3昇格、JFL優勝に加えて、個人では15点以上取って得点王という目標を掲げた。

子どものころからボールを追いかけた少年は、「Jリーガーになりたい」と、大学卒業後の2018年、0円Jリーガーとしてではあったものの、何とかJ3の選手になった。Y.S.C.C.横浜でプレーをスタートし、2年目に13得点と活躍。同じくJ3のロアッソ熊本に移籍し、選手兼営業という肩書で、自らプロデュースした『ASAKAWA SEAT』を販売するなど、年俸以上の売上をチームにもたらした。

2021年、ロアッソ熊本は、優勝でJ2昇格を決めたが、浅川選手自身は契約満了に。奈良クラブへの移籍は、J3からJFLへとカテゴリーを落とす格好になったが、奈良クラブを選んだのは、「それが、一番険しくて厳しい道だったから」と選んだ理由を語る。「夢見たJリーガーを一旦辞めても、地域に根ざし、地域を盛り上げることができれば、Jリーガー浅川隼人ではなく、浅川隼人としての価値を拡大できる」、そんな決意を胸にプレーし、最終的には、得点王に加え、MVPにベストイレブンの個人三冠を手にすることになった。

チームで行った『ならおこし』

J3昇格には、順位以外に平均入場者数が2,000人を超えるという条件があった。それに一役買ったのが、今年から奈良クラブが始めた39市町村応援プロジェクトだった。きっかけは、シーズン前に浅川選手と片岡爽選手と行ったライブ配信。「一緒に奈良を盛り上げよう」という内容を見た浜田満社長が、『チームでやったほうがいいよね』と賛同。奈良県内の39市町村をチームで回り、田植えや稲刈り、特産品や町のPRを行った。

「奈良クラブを知ってもらい、選手と触れ合ってもらった」ことで、高齢の方から、『チケットの買い方が分からない』と問い合わせがあるなど、今まで奈良クラブに興味を持っていなかった層が、スタジアムを訪れた結果、15試合で36,836人が来場。1試合平均2,000人という昇格基準をクリアした。

「地元の人たちは、『奈良には何にもなくって』と話されることが多いのですが、外から来た僕にしたらもう宝の山みたいな場所で。客席に古墳があるスタジアムもあるなど、生活に歴史が繋がっています。お気に入りの場所は談山神社。大化改新のきっかけになった場所で、蹴鞠のお祭りが行われます。奈良クラブも参加していたようですが、コロナでできていないので、今後、是非参加したいと思っています」と1年で奈良への愛情も深まった。

スポーツ×地域×食

「僕自身が貢献できるのは、熊本の時からやってきた、『スポーツ×地域×食』ということ。奈良でも、サポーターのお店で一日店長をしたり、試合の翌日に観光地を巡るイベントを行ったりして、ファン・サポーターとゼロ距離での交流を行ってきました。また、チーム強化の一環として、僕が運営する会社で販売する『ATHLE-MO』というサツマイモの加工品を補食としてチームに提供。年間サポートを行いました」とチームが行う以上のことを地域やチームに還元しようとしてきた。

結果的には、J3昇格に個人タイトルなど、すべてを手にした格好になったが、開幕から順調に進んだわけではなかった。開幕直前に新型コロナウイルスの罹患でシーズンに出遅れ、試合に出場したのは第4節から。1年を振り返って、「前半戦苦労したが、取りこぼしのない、負けないチームでした。10節を終えて選手だけでミーティングを行なった時に、若手でも意見を出し合える雰囲気があり、優勝には勝点がこれだけ必要だと話し合うことができた」ことで、「改めて優勝できるチームだと確信した」という。

浅川選手が2020シーズンから行なってきた活動に、選手が着用するスパイクをファンが購入して応援するプロジェクトがある。今は『Ultras』という自らが代表を務める法人で取り組みを広げている。今年、さらに手元に残ったスパイクを奈良の職人さんの手で、キーホルダーに加工。「1足から8つのキーホルダーがつくれます。今シーズンのスパイクは優勝、昇格、得点王を支えてくれたので、ご利益はないでしょうが、験担ぎにはなるかも知れません」と笑う。このキーホルダーは、12月30日の18時から、Ultrasウェブサイトで限定16個が販売、合わせて2023シーズンのスパイクサポートもスタートする。

浅川隼人


1995年5月10日生まれ、千葉県出身。178cm/70kg。ジェフユナイテッド市原・千葉のアカデミー出身で、八千代高校、桐蔭横浜大学を経て、2018年J3リーグのY.S.C.C.横浜に入団。ルーキーイヤーは出場試合0ながら、2019シーズンに32試合13得点と飛躍。2020シーズンよりJ3のロアッソ熊本、2022シーズンJFLの奈良クラブに。オンラインとオフラインを駆使し、社会へのアクションを起こすアスリートとしても知られる。

浅川隼人オフィシャルサイト:https://hayatoa.official.ec
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