浅川隼人、「移動式子ども食堂で、地域の課題解決と夢の創出を」

2023シーズン、J3の奈良クラブでプレーする浅川隼人選手は、4月の月間MVPを受賞。Jの舞台で初めて戦うチームを牽引している。さらに、ピッチ外でも、奈良県内の子どもの貧困問題に取り組むために移動式子ども食堂を8月から運営予定。クラウドファンディングでの賛同を呼びかけている。

初の月間MVP

昨シーズン、初めてJFLでプレーした浅川選手は、16得点でチームの優勝とJ3昇格に貢献。得点王にMVP、ベストイレブンの個人三冠も手にした。今シーズン、メンバーは大きく変わらなかったものの、J初参戦の奈良クラブは躍進を続け、13節を終えてチームは5勝6分2敗で4位につけている。

4月は4試合で3得点、チームも3勝1分で明治安田生命Jリーグ KONAMI 月間MVPを受賞した。「チームが好調じゃないととれない賞で、みんなでとったという喜びが大きいですね。でも、年間でとらないといけないと思っています。まずは夏までに2桁。昨年は16ゴールだったので、キャリアハイの17点はとりたい。2試合で1 得点のペースでいけるといいですね」と初の月間MVPの喜びも束の間、既に次の目標を見据えている。

「個人の結果がついてくると、チームの勝利も重ねられると思います。現時点ではライセンスの問題がありますが、J2に昇格できる結果を残したいですね。最近、フクアリでプレーする夢をよく見るんです。ジェフのアカデミーで育ったので、フクアリは特別な場所。『来シーズン、J2に昇格する』というお告げなのかも」と笑う。

6人に1人の子どもが貧困家庭という現実

Y.S.C.C.横浜の頃から、ピッチ外の社会貢献活動などでも注目を集めてきた浅川選手。ロアッソ熊本では、『食』に力を入れ、アスリート食堂の立ち上げや地産地消の取り組みを行ってきた。今回は奈良県内の子どもの貧困問題に取り組むために、移動式子ども食堂を運営。7月31日までクラウドファンディングで応援を募っている。

内閣府の調査によると、日本の子どもの貧困は約7人に1人とされており、奈良県や奈良市のアンケートでは、約6人に1人と貧困率が全国平均よりも高まっている現実がある。こうした状況や、奈良で子どもの貧困問題に携わる『認定NPO法人おてらおやつクラブ』と出会ったことが、浅川選手を突き動かした。

「4年前に、フィリピンのセブ島でボランティアサッカー教室を行い、世界の貧困を肌で感じました。一方で、日本ってもっと豊かな国だと思っていました。しかし、こんなにも身近に貧困問題が生じていて、今まで気がづくこともなかった自分自身に悔しさを感じました」とキッチンカーで子どもの貧困問題に取り組もうとしたきっかけを語る。

夢を持つ子どもたちに

おてらおやつクラブは、お菓子や食品など、お寺のお供えをおさがりとして経済的に困難な状況にある家庭に、専門の団体を通しておすそ分けを行っている。2013年に奈良県内の1つの寺院から始まり、今や賛同寺院数は1,800を超え、全国に取り組みが広がっている。

おやつおてらクラブの取り組みに刺激を受けた浅川選手は、キッチンカーでの移動式食堂とスポーツを掛け合わせることで、子どもたちの気持ちにも寄り添えないかと考えている。「スポーツが架け橋となって、地域の子どもたちに食を届けていけたら。そして、プロスポーツ選手として、一緒に身体を動かす機会も設けることで、子どもたちに夢を持ってもらうきっかけや、活力になれたらと思っています」と夢を持つ大切さを実感してもらうことこそが目的だという。

「僕自身、アマチュア上がりで、プロ初年度は固定給のない0円Jリーガーでした。だからこそ、収入の重要さが分かります。でも、それだけじゃなく、地域に根ざしたスポーツクラブでプレーするいちアスリートとして、地域と共に成長していきたいし、地域の課題解決に繋がる社会貢献活動ができればと思っています。キッチンカーの取り組みは、再現性があり、それこそ日本中のスポーツクラブやアスリートができる可能性がある。でも、まずは奈良で、『地域でこどもの健康を支え、共に育てる』取り組みを行います。7月末まで支援を呼びかけているクラウドファンディングに参画し、一緒に取り組むメンバーになってもらえたら」と呼びかけた。

浅川隼人


1995年5月10日生まれ、千葉県出身。178cm/70kg。ジェフユナイテッド市原・千葉のアカデミー出身で、八千代高校、桐蔭横浜大学を経て、2018年J3リーグのY.S.C.C.横浜に入団。ルーキーイヤーは出場試合0ながら、2019シーズンに32試合13得点と飛躍。2020シーズンよりJ3のロアッソ熊本、2022シーズンから、JFLの奈良クラブに所属。得点王、MVPなどJ3昇格に貢献し、2023シーズンは再びJリーグを舞台に戦う。オンラインとオフラインを駆使し、社会へのアクションを起こすアスリートとしても知られる。

浅川隼人オフィシャルサイト:https://hayatoa.official.ec
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