点字シャツ、「スポーツの楽しさを共に」

デンマークのスポーツブランドhummel(ヒュンメル)は、Jリーグのツエーゲン金沢、ジェフユナイテッド市原・千葉、ガンバ大阪と視覚障がい者支援に繋げる点字シャツを発表した。胸部にクラブ名を点字のデザインで配置し、裾部には指で読み取れるように点字加工を施した。SNSでも話題になってきた点字シャツの意図を関係者に聞いた。

ユニフォームの可能性

ヒュンメルは、“Change the World Through Sport.” (スポーツを通して世界を変える)をミッションに、人権、ジェンダー、平和をテーマにした取り組みを進めており、昨シーズンはJリーグやWEリーグなど6クラブ協働で平和をテーマにしたチャリティシャツをリリース。今年も9月のSDGsウィークに合わせて視覚障がい者支援に繋げるチャリティシャツを作成した。

点字シャツの企画・デザインを担当したのは、サッカーユニフォーム研究家ともさん。「ユニフォームにできることっていっぱいあると思うんですよ。地域のためになるデザインを、地域に根ざしたJリーグクラブが着ることで、地域の誇りやアイデンティティを形成するきっかけにもなる。ユニフォームの伸び代は無限大だと感じています」と普段からユニフォームトークを繰り広げてきた。

この春には、ヒュンメルが知的障がい児・者サッカースクール「トラッソス」と開催したインクルーシブサッカー『ゴチャタノ』にも参加。トラッソスのスクール生がチームごとに用意した16種類のユニフォームのひとつを着てプレーし、「同じユニフォームを着ることで感じる一体感、仲間という気持ちを強く感じました」と語っていた。そんな彼が、ブラインドサッカーチームを運営するツエーゲン金沢との取り組みを進めているヒュンメルに対して、「点字シャツで一体感を感じ、多様性のある社会に貢献できるのでは」と提案があったのは自然な流れだった。

手拍子が咲かせる花

ヒュンメルからデザインにあたってリクエストしたのは、目が見える、見えないに関わらず、同じ目線に立ち、感動を共有できるようなデザイン、ということ。広報担当は、「『秋が深まる寺院で、全盲の娘の手を取った母親が色づく葉っぱに触れ、語りかけていた姿を見て、美しさの感じ方が違うだけだと思ったことがある』というエピソードをイメージとして共有した」と話す。

ともさんは、フクダ電子アリーナでサッカーを観戦。サポーターに交じり声援を送り、時に目を閉じてスタジアムを感じる中で、「応援する手拍子と選手への声援や声掛けに目を閉じていても暖かさと一体感を感じました。その時に、コロナ禍のパナスタで必死に手をたたいて選手を鼓舞するガンバサポーターの姿を思い出し、サポーターの手拍子が重なり、スタジアムに花を咲かせるイメージでデザインしました」と語る。

今回、デザインでも活用した点字は、目の見えない方・見えにくい方のための総合福祉施設である社会福祉法人日本ライトハウスに監修を受けた。スペースが限られているということがあり、デザイン性、視認性も含めた結果、簡略化しながらも読める点字を配置した。自身も視覚障がい者である日本ライトハウスの奥野真里さんは、「スポーツから点字や視覚障がいに意識が向くというのはうれしいことです。私はJリーグの試合を間近で観戦したことはないのですが、地元の有名なクラブが着用してくれることで、点字を知るきっかけが増えるかな、と思います」と話した。

スポーツの楽しさを共に

父親が全盲で、自らもケガにより一時期、視覚障がい者だったという田辺陽一さんは、ツエーゲン金沢BFCでキャプテンと広報を務めている。「今回の点字シャツは、率直に早く着てみたいって思いました。ツエーゲン以外のものもほしくなっているくらいです」と笑う。「高校時代のケガが原因で、卒業後は盲学校の理学療法科に通っていましたが、見えない方でもスポーツを楽しんでいましたね。内容よりも、その場の一体感を楽しんでいるっていう感じで。うちのチームでもツエーゲンの応援に行ってるメンバーもいますよ」と語る。

ユニフォームの発表後、SNSでの反響も大きく、「眼が見えにくい、見えなかったとしてもパナスタの声援を耳で、肌で感じてもらう企画とかに繋がれば」や「父は数年前、病気ケガで片目の視力を失いました。生活に支障は大きくない様子ですが、先天性の方も含めて眼に関する疾病は気になります」、「グランパスサポーターだけど、視覚障害がある者として、感謝だ。視覚障害があってもサッカーと関わりたいし、好きなクラブを応援したい」など、視覚障がいのある方やその家族など当事者からの声も届いている。

今回、ツエーゲン金沢、ジェフユナイテッド市原・千葉、ガンバ大阪とサポートする3クラブと発表した点字シャツは、選手が入場時のアンセムウェアなどで着用する。さらに、その試合の日の関連イベントとして、各クラブはブラインドスポーツの体験会や視覚障がい者の啓発イベントなどを行い、それぞれのクラブがシャツの売上の一部を視覚障がい者支援に繋げるなど、地域に根差した取り組みになる。

点字シャツは、9月23日のフクダ電子アリーナ、9月24日のパナソニックスタジアム吹田、そして11月4日の石川県西部緑地公園陸上競技場での試合で、それぞれお披露目となる。ヒュンメルの広報担当は、「応援の手拍子が重なり、スタジアムに花が咲く様子をイメージしたシャツのように、目が見える、見えないに関わらず、サッカーを楽しむことで、多様性の花が地域に咲いていく景色を思い浮かべながら、当日を迎えたい」と締めくくった。


商品情報

ツエーゲン金沢 点字シャツ

Price:8,800円(税込)
Size:S・M・L・O・XO・XO2・XO3・XO4(ユニセックス)

※ネーム&背番号の加工受付はありません

ジェフユナイテッド市原・千葉 点字シャツ

Price:8,800円(税込)
Size:S・M・L・O・XO・XO2・XO3(ユニセックス)

※ネーム&背番号の加工受付はありません

ガンバ大阪 点字シャツ

Price:8,800円(税込)
Size:S・M・L・O・XO・XO2・XO3・XO4(ユニセックス)

※ネーム&背番号の加工受付はありません

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